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「ヤングケアラーがテーマの映画、最近多いなあ」と漠とした不安とともに映画を観始めたが、すぐにそんな不安は吹き飛んだ。
矛盾だらけの人間をちゃんと理解し、かつ的確な距離をもって描く谷口監督の眼にすっかりやられてしまった。
人間をしっかり描けば自ずと社会が浮かび上がってくるということを『嬉々な生活』は証明している。
映画の終わらせ方もこれまで観たことのない類の、見事なものだった。
どうか観てほしい。
横浜聡子(映画監督)
その一瞬でしか切り取ることの出来ない衝動と、
谷口監督の俳優たちへの優しい眼差しが見た者の心を撃ち抜く。
映画を見終わって息遣いが荒くなるほど爽やかな、おっさんの私でさえ今すぐ走り出したくなるような余韻。
この映画のラストシーンは必見です。
白石和彌(映画監督)
どこにでも在る出来事、ひと。皆ずっと同じではいられない。
時間は残酷だが救いでもあって、すべての人間に等しく降り注ぐ。
要らない時間や人間なんていやしない。
そう信じさせてくれる魔法がこの映画にはかかっている。
川瀬陽太(俳優)
私は洋画配給が主な仕事なので、本当は洋画の味方でいたいのですが。
谷口慈彦監督の映画にはやられました。
あのラストのシークエンス。
瞬間が永遠になるのを目撃し、
体力ゲージもメンタルゲージも一気に爆上がりしました。
誰にも撮れない映画だから、1人でも多くの人に見てほしい。
武井みゆき(配給会社ムヴィオラ代表)/2024SKIPシティ国際Dシネマ映画祭審査員)
"A life that is full of love that it breaks your hearts.
Beautifully made, and will not be easy to forget."
心が張り裂けるほどの愛に満ちた人生。
美しく作られており、決して忘れられないでしょう。
メイスク・タウリシア(映画プロデューサー)
人と同じように映画とも素敵な出会いがあるもの。
『嬉々な生活』は、そんな思いを抱いた作品だ。
主人公の嬉々(きき)という名前は、『魔女の宅急便』のキキが由来であることも、
タイトルが『嬉々の生活』ではなく『嬉々な生活』であることも、
谷口監督がこの作品に込めた思いとして、観終わった後、じんわり広がってくるものがある。
ダメな父親や、境遇に負けず生き抜く嬉々の演技・演出は、お見事!
暗闇のなかで予想外の行動をとる嬉々とラストシークエンスは、圧巻です!!
荒木美也子(アスミック・エース・プロデューサー)
最愛の母を亡くした家族。団地の一室で過ごす生活、沈黙する父、それを支えようとしたり、遠ざけようとする周囲——そんな最小単位の家族(世界)を丁寧に映しながら、失業や孤独、喪失といった日本社会を覆う不安や孤立までもが滲み出てしまう。
しかし、谷口監督は、嬉々の「正しさ」に追い立てられた生活の脆さに焦点を当て、ベランダから覗くような限られた視界に、それでも確かに何かが芽吹こうとする気配をとらえていた。不器用ながらも差し出される手があり、言葉にされないまま寄せられる思いやりがある。誰かを思う静かな気配が、沈黙のなかに幾重にも重なっていく。
わたしは、ラストカットで駆け出す嬉々の背中姿を見送って、
ファーストカットのホームビデオで見せた嬉々の笑顔をもう一度見返した。彼女はこれから、人生の「痛み」と「願い」を一つにして引き受ける力強さをもって駆け出していくだろう。
小川あん(俳優)